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極東製薬工業(株)公式ブログです。
当社と関わりのある先生方からの投稿記事や、当社の細胞培養オタク研究員のつぶやきを紹介致します。

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【主席研究員部屋4】この子の名前はどうしよう?

 久方ぶりでございます。野辺の一培地屋(オタク屋かも)佐々木でございます。

 さて、世の中の様々なニーズが増えた所為か、近年は仕事のバリエーションも大分増えています。呑気に「石川や 浜の真砂は 尽くるとも 世に培養の種は尽きまじ」などとひとごとのように言えていたら良いのですがなかなかそうも行かないのが世の常ですね。もっとも全部引き受けてしまうと油で釜茹でされるよりひどいことになりますが…

 まあ、そのようなニーズから出来上がった製品(培地)は子供みたいなものなので、「大きくなれよ~」と心のなかでハイリホーしながら世の中に送り出します(かなりネタが古い)。その際、はたと困るのが「さて、この子の名前はどうしよう?」ということです。身贔屓と言われても、やはり出来の良い子にはユーザーの方に覚えていただける良い名前を付けてあげたいと思うのが親心です。

 この名前付けが実に難しいのです。世の中には商標登録というシステムが有り、これに登録されている名前とバッティングする名前は使うことが出来ません。登録された商標は開発したメーカーにとって、ブランドを形成するための必須のツールですが、登録されている名前の数が半端無いため、無い頭を捻って製品名を決めても大抵バッティングするので、ものすごい数の名前を考えなくてはいけなくなります。この作業が案外大変です。

 結果として力尽きて、多くの場合は、商標に登録できないような開発コードや記号の組合せでお茶を濁すことになります。早々に記号の名前が溢れますので、製品の内容を名前では識別することが出来ず、時間が経ってくると開発者ですら「この子は誰だったっけ」という現象が起こります(単に私の記憶容量の少なさの問題かもしれませんが…)。そうでなければ製品イメージとはかけ離れますが、使われることがなさそうな名前を選ぶという手もあります。

 私的にはそのうちに「疾風怒濤○○培地」とか「「物知義理✕✕培地」」という名前をつけてみたいと思っています。ただし、そんなことをすれば開発会議の席上で参加者全員のブーイングを食らった上、企画書に不可の判子を押されて差し戻されるという未来も容易に予測できるので、なかなか踏み切ることが出来ません。



ところであなたのお名前は?


自社製品の名前付けの話との関連で、他の培地はどんな風に培地の名前をつけているのか、少しうんちく話などしてみます。今までの処、培地の名称は凡そ以下のようなグループ分け出来るようです。

《1》 開発者の名前をつけたもの

《2》 開発者が所属する機関名やその略号

《3》 内容や性能を示す形容詞や名詞などの組み合わせあるいはその略号

《4》 単なる記号




《1》 は、古い時代に開発された培地には多いです。有名なところでは Eagle 先生の Eagle MEMだと思います。正式名称は「Minimum Essential Medium Eagle」となります。MEM はバリエーションが多く、多くの先生方が変法を開発されていらっしゃいます。Dulbecco 先生が改変されたのがDMEM (Dulbecco’s modified Eagle's medium)培地2,3)です。更にそれを Iscove 先生が改変されて IMDM (Iscove’s Modified Dulbecco’s Modified Eagles MEM) 培地4,5)となりました。名前はだんだん長くなっていきます。さすがにこれで打ち止めのなんですが、MEM の改変培地はそれ以外もバリエーションが有ります。

Eagle 先生との双璧といえば Ham 先生の Ham F12 培地6, 7)です。 Ham 先生は微量元素に着目されて培地の開発をされています。そのため、他の基礎培地と比較して微量成分の種類が非常に多いです。微量元素の細胞に対する効果を判定するのは非常に難しく、特に生体成分(FBS なんか)を加えるとこの生体成分からのコンタミネーションによって必要量が賄われてしまうことも多いです。必要量もとんでもなく少なく(ppb オーダー)、分析が難しいため、培地の無血清化を試みる際に苦労する成分となっています。

最近では、上皮系細胞等の無血清培地を開発するのに、栄養素的なリソースは DMEM を、微量成分的なリソースは Ham F12 からとしてこれらを混合したものをベースに使うことで、この微量成分の検討に手を抜く...(アワワワ 口が滑った)、もとい開発期間のコストが低減できます。実際に DMEM と Ham F12 を等量混合した培地が DF 培地という名称で各社から販売されています。



《2》 の例は研究者の所属機関の略号と数字の組み合わせなどで名称を決めているような場合です。メージャー処としては、本ブログ へ寄稿して下さった順天堂大学の奥村先生も言及されていますが、 Roswell Park Memorial Institute の Moore 先生の一派により作られた RPMI1640 培地8,9)です。この培地はヒト白血病細胞の増殖を指標に開発された培地で、緩衝系が他の培地と比較して独特の組成です。

他には以下のような名称の培地も有ります。

MCDB 培地:
Department of Molecular, Cellular and Developmental Biology at the University of Colorado. (Ham 先生が所属されていた研究所)

WAJC404 培地:
W. Alton Jones Cell Science Center



《3》 の例では企業が出す培地の名称によく使われています。例えば九州大学の原田先生、牧野先生が開発された凍害保護液「CP-1」はCryoprotectant(凍害保護物質)の略号です。同様に凍結保存用培地 「FM-1」は開発者の元理化学研究所の大野先生によれば、Freeze Mediumの略号とのことです。それだけではなく、Hyper だの enriched だの Boost などを接頭語として付けることも有ります。やはり九州大学の村上先生の開発されたハイブリドーマ用無血清培地「E-RDF」の E は enriched の略号ですね。これらの接頭語はこの製品はこんなにすごいんだぞという開発者の意気込みみたいなもんですが、同じ用途の製品市場で強調された製品名称がたくさん並ぶと有り難みはなくなっていきます。



《4》 については、よくあるのは開発順にA、B、Cだの、1、2、3だの振っていく場合で多い例ですね。開発者でも時々、この子はだあれ?現象を引き起こします(私だけかもしれませんが)。ちなみに弊社のヒトiPS/ES細胞用凍結保存液「CP-5E」は「CP-1」から5番目の開発製品として名付けられたのではありません。「CP-5E」は「CP-1」に対してEthylene glycolが5%追加されているためにこの名称になりました。その意味では内容に関する名称の付け方ですね。



以上が培地の名称うんちくです。若いころはいずれ自分が開発した培地に自分の名前を付けたいと思っていた時期もありますが、さすがにこの歳(50雲斎)になると恥ずかしくてできません。「疾風怒濤○○培地」とか「物知義理✕✕培地」とかを考えているのは恥ずかしくないのかと突っ込まれたら返答しにくいですが...  まあ、弊社から上記の名前の培地が発売されたとしたら培地屋がついに周りの説得に成功したとお考え下さい。乞うご期待

今日はここまで



【参考文献】
1) Eagle H, Amino acid metabolism in mammalian cell cultures., Science, 1959, Vol.130, 3373, p432-437
2) Morton HJ, A survey of commercially available tissue culture media., In Vito, 1970, Vol.6, 2, p89-108
3) Rutzky LP, etal., Supplement to a survey of commercially available tissue culture media (1970), In Vito, 1974, Vol.9, 6, p468-468
4) Guilbert LJ, etal., Partial replacement of serum by selenite, transferrin, albumin and lecithin in haemopoietic cell cultures, Nature, 1976, Vol.263, 5578, p594-595
5) Iscove NN, etal., Complete replacement of serum by albumin, transferrin, and soybean lipid in cultures of lipopolysaccharide-reactive B lymphocytes., J Exp Med., 1978, Vol.147, 3, p923-933
6) HAM RG, CLONAL GROWTH OF MAMMALIAN CELLS IN A CHEMICALLY DEFINED, SYNTHETIC MEDIUM., Proc Natl Acad Sci USA., 1965, 53, p288-293
7) HAM RG, Cloning of mammalian cells, Methods in Cell Physiology Edited by DM Prescott, 1972, 5th edition, , p33-74
8) Moore GE, etal., Culture of normal human leukocytes., JAMA, 1967, 199, 8, p519-524
9) Moore GE, etal., Cell line derived from patient with myeloma., N Y State J Med, 1968, 68, 15, p2054-2060



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