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【特別講義 第11回】 腸上皮オルガノイド培養

細胞培養特別講義 第11回講師は、前回に引き続きご講義いただいております東京医科歯科大学の中村哲也先生です。今回は「腸上皮オルガノイド培養」というテーマでご寄稿いただきました。10年前まで体外で培養することが極めて難しかった“腸上皮細胞”がどのようにして培養可能になってきたのか、非常に興味深い内容となっています。是非お楽しみ下さい。

■ 講師紹介ページ:東京医科歯科大学 中村哲也 先生

 

 

“腸上皮オルガノイド培養”
東京医科歯科大学大学院 医歯学総合研究科 
消化管先端治療学講座 教授
 中村 哲也 先生

 

 今回は、正常腸上皮組織の体外培養技術を紹介します。

 

 Satoらは、マウス小腸上皮幹細胞を培養する新規の手法を報告しました(Sato T Nature 2009)。この方法では、腸組織から回収した上皮成分をマトリゲル*と混合し培養ディッシュに播種します。腸上皮を含むマトリゲルが固化したら、これを覆うよう液体培地を加えます。培地には、チロシンキナーゼ型受容体に結合し活性化するEGF、BMP蛋白のアンタゴニストとしてその活性を抑制するNoggin、およびWntシグナルを増強するR-spondin1を添加します。

 

 この方法で培養をおこなうと、吸収上皮細胞、杯細胞、内分泌細胞、パネート細胞など全タイプの分化細胞を含む小腸上皮が、特徴的構造をとりながら育つことがわかりました。すなわち、単層上皮が3次元的に閉じた嚢胞構造を呈しつつ、中央の嚢胞構造から外側のあちこちに向け突出する部分をもつ構造です。

 

 面白いことに、これら突出部の先端にはLgr5陽性細胞とパネート細胞が局在することから、これらが陰窩構造に相当することがわかりました。また、本法で小腸上皮を数日間培養すると、長径が数百マイクロにもおよぶ大きな構造となりますが、周囲のマトリゲルを消化し上皮を回収し、これを破砕・断片化したあと再びマトリゲルに包埋して培養を繰り返すことで、半永久的に上皮培養が可能なこともわかりました。

 

 本培養技術はこのように、腸上皮を生きたまま維持し増やすという、これまで克服困難とされた障壁を超える画期的技術として注目を集めています。また本法は上述のように、生体腸上皮にみられる陰窩類似の構造をつくることや、生体腸上皮恒常性に重要な因子を添加因子として要求することから、腸上皮細胞を単に増やすのみでなく、生体内での上皮構造・機能を保持した様式で培養できる技術であると考えられています。

 

 もうひとつ、同じ2009年に発表されたOotaniらによる腸上皮培養技術もきわめて重要です。彼らはマウスの小腸・大腸を破砕した組織をI型コラーゲン内に3次元的に包埋し、これをair liquid interface (ALI)法、すなわち気相液相界面法を用いて培養する方法を報告しました(Ootani A Nat Med 2009)。

 

 この方法でも腸組織は内腔をもつ嚢胞構造をとり、その最内側に上皮細胞が並びます。Sato法と異なり、この培養構造の外側には、筋線維芽細胞等の非上皮細胞が配置することが特徴です。上皮組織には全ての分化細胞が含まれる一方で、体外でも活発に増殖する細胞を認め、かつ実際Lgr5陽性細胞も確認されることから、本培養においても機能的上皮幹細胞が培養されていることが示されました。

 

 本技術の特徴は、Wntなど腸上皮の増殖や分化に重要な因子を特別に添加する必要がない点にあります。このことはこれら因子が本培養系では自律的に、おそらくは共存する非上皮細胞成分から供給されることを意味しています。Sato法と異なり、非上皮細胞を含む本培養技術は、上皮/非上皮相互作用解析の重要なツールになるものと考えられています。

 

 腸上皮培養技術の革新は、その後さらなる進歩を示しました。Satoらは純化上皮を培養するオルガノイド技術を大腸上皮へも応用したほか(Sato T Gastroenterology 2011)、この技術がヒト腸上皮細胞にも利用できることを示しました(Jung P Nat Med 2011)。さらに胎児腸上皮を培養する技術も開発され(Fordham RP Cell Stem Cell 2013, Mustata RC Cell Rep 2013)、さまざまなタイプの腸上皮が培養可能となりました。

 

 一方Ootaniらに始まった、上皮/非上皮混合培養も進化を遂げました。Spenceらは2011年、ES細胞やiPS細胞などヒト多能性幹細胞を、胚体内胚葉、中腸/後腸へと順次分化させ、最終的にSato法で3次元培養することにより、上皮/非上皮組織を含むヒト腸様培養組織(human intestinal organoid: HIOs)を作成する技術を開発しました(Spence JR Nature 2011)。さらにこのHIO技術に、多能性幹細胞から誘導するneural crest cells (NCCs)を組合せ、神経細胞成分を含む腸様組織培養技術も開発されました(Workman MJ Nat Med 2017)。

 

 次回には、2000年代当初に夢のように語られていた正常腸上皮培養が現実のものとなった今、腸上皮培養が次にどのように進化しようとしているかについて紹介したいと思います。



*マトリゲルは、マウス肉腫細胞から抽出した細胞外基質を豊富に含む細胞培養用調整品であり、ラミニンやIV型コラーゲンを多く含む。



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