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【特別講義 第19回】ありふれた「恩師との出会い」

 講師は前回(細胞培養 特別講義 第18回)に引き続き、物質・材料研究機構 の谷口彰良先生です。前回は、細胞の研究をスタートすることになった「細胞との出会い」のエピソードをご紹介いただきました。

 

 今回は、研究者の基礎を学ぶことになった「恩師との出会い」についてご執筆いただきました研究者の方々をはじめ多くの皆さまに楽しんでいただける内容になっているかと思います。どうぞご覧くださいませ。

 

■ 講師紹介ページ:物質・材料研究機構 谷口 彰良 先生

  

 

" ありふれた「恩師との出会い」 "

 

物質・材料研究機構 グループリーダー

早稲田大学理工学術院 教授

谷口 彰良 先生

 

 

 「みなさん、コッホの三原則をご存知ですか?」その先生は発表の冒頭でそう話し始めました。会場はにわかにざわつきました。

 それもそのはず。ここは癌学会のシンポジウム会場です。細菌学会ではありません。このシンポジウムのテーマは「ウイルスと癌」です。レトロウイルスの癌遺伝子やHTLVなどの演題の中に「ヒトパピローマウイルス感染はヒトの子宮頸がんの原因である」という題目でその先生は少しざわめいた会場の中で力強く話し始めました。

 

 

 私は大学院を卒業した後、縁あってある臨床検査試薬の会社に就職しました。そこで2年ほどイムノアッセイの仕事で製品化に近いところまで進めることができました。当時の研究部長さんから「君、今度国内の大学や研究所に出向してみないか?勉強になるぞ!」と言われました。これは細胞の研究を始める絶好の機会だ!と思い二つ返事でOKしました。幸運にも出向先はいくつかの候補の中から自分で選んで良いと言われました。その秋の学会でその候補の先生方が発表されるので、その発表を聞いてどの研究室にするか決めようと思ったわけです。

 

 このシンポジウムはマスコミにも注目されているようでテレビカメラも入っていました。私は一番前の席で先生の話を聞いていたのですが、最前席は新聞やテレビの記者で埋まっていました。コッホの三原則は感染症の原因菌を証明するためのものです。コッホの三原則は1)全ての患者から同じ感染源が見出され2)感染源が単離され3)その菌で病気を発症させることが出来ると言うものです。

 

 

 子宮頸がんの場合、1)と2)に関してはヒトパピローマウイルスが見出され単離されています。そして安本先生はヒトパピローマウイルスDNAでNIH3T3細胞を癌化させることを世界で初めて成功させていたのです。その後、ヒトパピローマウイルスDNAでヒトのケラチノサイトを不死化することに成功しています。これは3)の成功を意味しているわけです。その先生はコッホの三原則にそって「ヒトパピローマウイルス感染はヒトの子宮頸がんの原因である」と言うことを見事に証明して見せたわけです。先生のユニークな発表を聞き終えてものすごい感動を覚えました。「素晴らしい!カッコいい」素直にそう思いました。

 

 

 しかし、会場の反応は少し違っていました。発表が終わって会場の明かりが点いて振り返ると、すでに何人かの研究者がマイクの前に立っていました。そして1人の先生は座長が話し始める前に「私はこのような発表は認めない。癌は感染症のように単純なものではない!」と大声で叫び、その先生の反論を聞く前に大股で会場を後にしてしまいました。後でこの方は癌学会の重鎮と知りました。この言葉で会場は一瞬にして凍りつき、数秒間の沈黙の後に「フロワーからの質問を受け付けます。」と座長の先生が声を振り絞りました。その後の質問は概ね好意的なものでした。私はこのユニークなプレゼンをするこの先生がすごくカッコよくて、ここで細胞とウイルスの研究をしようと心に決めました。この「カッコいい」が重要なのです!私は他の候補者のプレゼンを聞く前に決めてしまいました。これが私の恩師との出会いです。

 

 

 こうして、やっと憧れの細胞の研究をスタートする機会を得た訳です。先生のラボではヒトケラチノサイトをヒトパピローマウイルス癌遺伝子で不死化した細胞を用いて癌遺伝子の研究を進めていました。培地はMCDB153というケラチノサイトを無血清培養できる培地を使っていました。細胞を増殖させる時は通常よりカルシウム濃度を低くして細胞―細胞の結合を阻害します。分化誘導時にはカルシウムを添加します。丸っこい形をしていた細胞がカルシウムを加えた翌朝、顕微鏡を覗くと皮膚の表面のように扁平な形に変化していました。これはすごい!マクロファージを初めて見た時以来の感動です。細胞研究、いよいよスタートです!

 

 

 先生は当時としては珍しく細胞と分子生物学の両方の専門家でした。当時は分子生物学と言えば大腸菌などを対象にしたもので、動物細胞の分子生物学は日本では皆無の時代でした。先生は大学を卒業後、勝田甫先生(東大・伝研・細胞培養の父)の研究室で技術員として働いていました。そこで細胞培養のことを一からから学んだそうです。その後、高木康敬先生(九州大学・分子生物学の草分け)のラボで助手になりました。そこで当時の最先端の分子生物学を学んだのでした。最新の細胞と分子生物学の両方を1つのラボで学べる絶好の機会となりました。すごいラッキーです。

 

 先生はアメリカのNIHに10年間も働いていたので、当時の日本人研究者の中では英語は素晴らしく上手でした。海外の研究者とのコミュニケーションも積極的にとっていました。英語のプレゼンもすごく上手でした。海外の学会ではどうしても日本人同士で固まる傾向があります。しかし、先生は1人でいろんな人と積極的に話に行きく姿をみて英語がヘタクソな私はただただ「すごいな〜カッコいいな〜」と思っていました。

 

 先生には「谷やん(私のあだ名)はもっと体のことを勉強しなければいかんなぁ〜。細胞だってもともと体の中にいたのだから、組織学を勉強しなさい」とよく言われました。先生はさらに「シャーレーの中での出来事を生体内をイメージして考えなさい。そしてそれを分子レベルで考えるようにしなさい」と。この考え方はその後の研究に大いに役立ちました。先生は出世欲みたいなものがほとんどなく、純粋に研究を楽しんでいるようでした。このような先生の姿から、研究者としての生き方みたいなものも学びました。そしてただただ「カッコいいな〜私もあんな風になりたいな〜」と思って必死に研究に没頭しました。結局、先生のラボで4年程勉強させてもらいました。私は20代後半だったので、先生から沢山のことをがむしゃらに吸収しました。先生から学んだ事はその後の細胞の研究者としての基礎となる大事なものになりました。後日、先生に「なんであんな破天荒なプレゼンをされたんですか?」と尋ねてみると、「多くの人に聞いてもらい、理解してもらうためにはあれくらいしないといけないんだよ!」と。やっぱ先生はカッコいい。

 

 

 あれから30年以上経って「私も少しはカッコよくなってるのかなぁ〜なれてるといいなぁ〜」と思いつつ今も先生には心から感謝しています。みなさんもそんな「恩師との出会い」があるのではないでしょうか?

 

 

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